著者の玄順恵(ヒョン・スンヒェ)さんは、7月に亡くなられた作家の小田実さんの妻で、水墨画家でもあるかたです。
この本は玄順恵さんの自伝的エッセーになっていますが、私がこの本を読もうと思ったのはタイトルに惹かれたから。 小田さんを人生の同行者(フェロー・トラベラー・・・「つれあい」のことを小田さんはそう呼んでいたそうです)として一緒に人生を歩み、その日々を玄さんは「人生のコラボレーション」と呼んでいます。 旅は、米国、ドイツ、中国、韓国などですが、その土地土地で生活しながら、その国の歴史、人物などの考察は、私が知りえなかったそれらの土地(国)の違う側面を見せてくれました。 勿論、玄さんの視点からですが、「あっ、そういうこともあったんだ」と教えられました。 又、古代から近代までの歴史の中での朝鮮と日本の関係は、「血の繋がり」という事も考えながら興味深かったし、在日朝鮮人二世の立場からみた日本についても、色々考えさせられました。 ************************************ 私は新しい場所に行き、新しい人々に出会うたびに「あなたはどこの人ですか」と聞かれ続けた。そのたびに私は「コリアン・ボーン・イン・ジャパン」と答えてきた。そして、それはいったいどういう意味なのかくり返し問われてきた。人と出会うたびに私は自分のありようを試され、鍛錬されてきたように思う 「私は何者か」という問いをめぐって私が見つけ出した答えは、「人生の痕跡を抱きしめながら自由でいる個人。つまり世界人である」だった。 それは決して、自分自身の根拠など要らないということではない。 世界人とは、自らの血や国、歴史的背景、また遺伝子の記憶などをふり返り、それらを深く理解することから出発しながらも、国や民族や国籍のしがらみから自由になれる人のことだ。私と祖国、紛争にまみれた世界の不幸な過去と現在を克服する道は、ひとりの個人が堂々とまっとうな市民として生きていくことなのだと思う。 **************************************** 最後はこう終わっていますが、自伝的エッセーでありながら、今私たち地球人がどんな方向を目指したらいいのか、問いかけているような本でした。 読後ちょっと疲れましたが、少し時間をおいて読み返したいと思います。 **************************************** **************************************** 気温が真冬並みに下がりました。 真冬日ではないのですが、用事を足しに車を出すまで屋根の雪を降ろしたり、フロントガラスや周りの雪をガリガリで、時間がかかりました。 こんな時は歩きがいいのですが、今日は荷物があったから仕方なく。 でも昨年新しくしたゴム長で足元は真冬仕様、今夜は久々のシチューでした。 この寒さ明日以降も続きそう。 皆さんも風邪には気をつけて下さい。
by koro49
| 2007-11-21 23:45
| 本
|
Comments(17)
Commented
by
nasuka99 at 2007-11-22 09:39
そちらは寒そうですねぇ~
天気地図が雪だるまマークになってましたよ~~ 自分の属性と言うのは、 自分を構成する何を相対化するか、ということですよね。 異星人が現れたら、地球人は国境を越えて団結するんだろうか・・・(^_^;) なんてことを思いながら、 先のサイクロンで被害を受けた地域のニュースを見て、 避けられる未来の戦争のために無駄な軍事費を増やすよりも、 待ったなしの災害のために世界が協力し合うことのほうがよっぽど有意義! とつぶやいてしまいました。
0
Commented
by
sarasa-reisia at 2007-11-22 11:33
コリアン・ボーン・イン・ジャパン・・・サウジアラビアで「外国人居留区」に住んでいた時、親しくしていた人がそうでした。
彼女はハーフでお父さんは日本人でしたが、戦争で亡くなり、幼い頃に韓国に移って「ハーフ」である事を隠して育った・・・と言っていました。 日本語は全く話せませんでした。 慣れない海外の暮らしで戸惑う事が多い私を、いつも気遣ってくれるやさしいお姉さんでした。 日本や戦争に対してはもちろん拘る気持ちがあったと思いますが、「従軍慰安婦」の事でフィリピン人の隣人に責められた時も「彼女が何かしたわけではないじゃないの」と庇ってくれました。 彼女のご主人はイギリスの人で、今はイギリスに住んでいます。 ご主人のお母さんに「韓国人が息子の妻になるなんて」と言われ傷ついた・・と言っていましたが、お母さんとコミュニケーションが取れるようにと必死で英語の勉強をしたと言っていました。 彼女からインターナショナルである事とは何か・・・を教えてもらったような気がしています。この本も読んでみたいです・・・
Commented
by
koro49 at 2007-11-22 14:07
>nasukaさん
寒いよ! さすがに真冬日ではないけど、それに近いね。 でも、今は陽射しがあるから少し気分がいい。 私ね、以前も記事で書いたと思うんだけど、今の私が生まれるまでどれだけの血が混ざっているのかって考える事があるの。 先祖なんて、5代まで遡れたらいい方だよね。 その先を調べるとなると難しそう。 韓国とかだったらちゃんと記録してるんじゃなかった? それは置いといても、そんな事を考えてると人はみんな繋がっていくと思うんだよね。朝鮮半島とだって、昔から行き来していた訳で、そんな人たちの子孫はこの国にも向うにもいる。 島国の日本でこうなんだから、大陸の国はもっと繋がってると思う。 それを考えたら、戦争をしたり、自国の利益ばかりを追求する時ではないような気がするの。
Commented
by
koro49 at 2007-11-22 14:23
>更紗さん
あぁ、更紗さんはそんな経験があるんだね。 この玄さんも小田さんとの結婚に際して、周りでは反対する人もあったらしい。戦争のこととか、色んなことでね。 でね、結婚の立会人をお願いしたのが宇都宮徳馬氏だったの。 すぐ引き受けてくれたんだそうだけど、その時宇都宮さんのお父さんのエピソードがあってね、お父さんは朝鮮人に対して、日本人以上の親愛感を持っていたんだって。それで息子の徳馬さんを朝鮮女性と結婚させたかったって。でもお父さんは17歳のときに亡くなったので、その夢は果たせなかったって。 玄さんはずっと朝鮮籍だったけど、韓国籍を取得するんだよね。 それは両親のお墓を韓国にしたことで、朝鮮籍だとお墓参りに行けないこともひとつの理由だったみたい。 でも、それによって、北朝鮮の姉のお墓参りには行けない。
Commented
by
koro49 at 2007-11-22 14:24
>更紗さん 続き
又、小さい時通った朝鮮人学校では韓国籍、朝鮮籍、日本国籍の子供達も皆仲良く過ごしていたって。 『国籍は個人とは関係なく各国がつくった目に見えない鉄条網にすぎない』・・・と書いてるの。 その通りだよね。 どこの国に生まれても、どこの国の人と結婚しても、人は皆幸せになる権利はあるはずだし、一人ひとりの個人が集まって世界国になればと思ったり。 この本、全部理解できてないので又読むね♪ 従軍慰安婦問題や日本の戦後処理のことも、玄さんの立場で意見を述べています。 さっ、これからお昼ごはんだよ~♪ 食べにこない?花巻に挑戦したよん^^
この本紹介してくださってありがとう。必ず読みます。
朝鮮と日本、たくさんのことが脳裏を駆け巡ります。 日本人として、朝鮮と日本のことを、どういう立場で考えていくか とっても大切な時期ですもの。 てぐすね引いて、ナショナリズムの方向へ誘導しようとする勢力も馬鹿にならないし、 インターナショナルね、 明日、本を手に入れます。
Commented
by
mmeazores at 2007-11-22 16:27
頃子さん こんにちは
もう雪ですか。関東は先日木枯らし一番が吹いていよいよ冬本番・・・と覚悟したところです(甘いねぇ 笑) 私の父は日本軍占領下の韓国で生まれて敗戦で引き上げ者。亡くなる数年毎年自分の生まれた場所を探して馬山と言う所に通い最後に見つけて・・・。 子どもの頃熊本に住んでいましたが韓国籍の人も多く、貧しい生活をしていらっしゃいました。でも子どもたちは皆一緒に仲良く遊んでいました。兄の親友は中学生になってすぐ北へ帰っていきましたが其の後音信普通です。父は冬になると朝鮮漬け(キムチ)を作っていました。今思えば我が家が特別だったのかもしれません。父は韓国が好きでしたから。 頃子さんのお家のおまじないと私のおまじないが一緒!義母が病床から私に言ってくれた言葉です。困った時は何時も母のこの声に支えられています。
Commented
by
koro49 at 2007-11-22 23:52
>遊工房さん
玄さんが『私の祖国は世界です』と言えるようになるまでは、玄さんの家族が抱えて歩んだ人生(それを玄さんは「悲劇的痕跡を抱えて」と書いているのだけど)、玄さん自身の歩んだ人生を咀嚼して、プラス面を栄養として取り込んだ結果、到達した考えだと思うのです。もちろん、小田さんに出会い、フェロー・トラベラーとして共に人生を歩んだ事も大きいでしょうね。 まさかり半島の小さな村に生まれ育った私には想像も出来ない人生です。 玄さんの考え全てを良しと思えないかも知れないけど、物事を考える時に多角的に見ることが出来たらといつも思うのです。 遊工房さんの感想も楽しみにしてますね^^
Commented
by
koro49 at 2007-11-23 00:01
>アゾーレスさん
あっ、今日は寒いわけでした。真冬日だったのです^^; アゾーレスさんのお父さんはそんな経験をされていたのですね。 ご自分の生まれた場所を見つけることが出来たのですね。 小さい頃、朝鮮の人たちを揶揄する言葉がありましたよね。 それを意味も分らずに言ってたような気がして恥ずかしくなります。 私の周りにはいませんでしたが、主人も中学の時に友人が北朝鮮に帰ったそうで、ニュースを見ると「どうしてるかな?」と話すことがあります。お兄さんのお友だちだった方も、きっと私と同年か数年しか年の違わないような気がします。 どうしているんでしょうね。 お父さんのキムチは美味しかったでしょうね♪^^ そう、ぶんさんのところで読みました☆ じょぶだいじょぶだい!!! 『じょぶだい同盟』発足しましょう♪ 何故か元気になりますよね。ケセラセラと同じに^^
私のブログにこの本のことを書きました。(まだ、読み終わったわけではありません)写真をお借りして使わせていただきましたが、まずいようならすぐ、削除します。
Commented
by
koro49 at 2007-11-26 00:21
Commented
by
juliavonlea at 2007-11-26 08:35
小田実さん、ずーっと前に、大好きな岸恵子さんのエッセイに出て来ていて知りました。すごくざっくばらんなお人柄だって。「何でもみてやろう」を書かれていたので、まずはそれを読みました。硬派~っていうイメージでした。亡くなられたのは、新聞記事で知りました。奥様のことは全然知りませんでした。在日朝鮮人の方だったんですね。驚きました。すごいと思いました。精錬潔白という言葉が浮かびました。うまくは言えませんが。
子供達が通う英語教室に在日の男の子がいます。先日、ハロウィーンの時に、お父さんと一緒に先生にプレゼントやお手紙を渡していました。その時の男の子の言葉が印象的でした。「ハングルの方が格好いいから、ハングルで手紙を書いたんだ。僕は、ハングルの学校に行ってるんだ。ハングルもしゃべれるんだよ」いつもは、普通に日本語を話しているので気に留めたことがありませんでしたが、彼の言葉にプライドを感じました。
Commented
by
koro49 at 2007-11-26 22:57
>juliaさん
あっ、岸さんのその本は読んでいないのですが、そのエピソードも載っていました。確か小田さんの本を読んだ岸さんが会いに行ったら岸さんのこと知らなかったという話じゃなかった? って、読んだばかりなのに忘れてる^^; 小田さんと結婚したことで、又違う世界を見ることになって、そしてさらに自分の祖国のことも考える事になったのでしょうね。 その子のように普通にそんな事を言えない時代もあったという事、今の若い人は知らないでしょうね。 同時に私の知らないことも沢山。 でね、歴史を知ることの大切さを知ったよ。知られている歴史が全てでないという事も。
Commented
by
julia
at 2007-11-27 08:16
x
それです、それです。そのエピソード。(笑)
おまけに、思い出してくれたはいいけど、どんなことかと思いきや、小田さんが何かを食べた時、誰かの背中に汚れがくっついちゃった。それが、どうやら岸さんだったらしいって大笑いして話してくれたとか。岸さん、確かけちょんけちょんのゲジゲジだ~とか書いて笑ってました、本の中で。 「**でも***でも出来る」という例え、子供の頃、よく聞いていましたが、その、「***」の部分、意味などわからず聞いていました。なので、大人になってから知って、びっくりしました。
Commented
by
koro49 at 2007-11-28 00:28
>juliaさん
あっ、良かった。合ってて^^; 岸さん、周波数が合ったのでしょうね♪ >※※※ そう、意味も分らず言ってました^^; 今回この本を読んで、歴史をキチンと知ることの大切さも考えました。でも、時として歴史はゆがめられて伝わる事もあるんですよね。
Commented
by
2of4of1 at 2007-11-29 16:58
世界人とは・・・しがらみから自由になれる・・なんて深く、しみじみ説得する言葉なんでしょうか。
こんな言葉に辿り着いた人生、大変だったろうけど、その代わりに頂いたのかなあ・・素敵な方です
Commented
by
koro49 at 2007-11-30 13:32
|
最新のコメント
Links
お気に入りブログ
APPLEPIE QUI... うちの食卓 Non so... 夢見 油彦 の「ニッキは... 食卓から愛をこめて arinco's kit... ミ ル キ ー ハムスターパゾ 今もス... ぽー&きぃ 「美味しかった!」が聞きたくて =この道はいつか来た道= TERVE !! Art to life まるごと青森 馬鹿の直感 パンの木ぷらす~備忘録 人生万事塞翁が馬 about ・ぶん ばーさんがじーさんに作る食卓 写真日誌 みつばちのすばこ うろうろ、ごそごそ。(旧館) 梟通信~ホンの戯言 響の言葉 akko's Cafe ... イスラムアート紀行 パリでごはん VANILLAな哲ちゃん... 毎日手紙を描こう★貰うと... **おやつのお花** ... 九十代万歳! (旧 八... wiwiの気まぐれ日記 ライフノート Over the Blue 食卓の風・・・ 更紗の国から 流木民 やっぱりRolling3... たのしぐ いぐべし 暮らしのエッセンス ... ちょろり1日々徒然 てんてまり@Up.town harucooking ... 魚屋三代目日記 chiocciola つまみの記録 なすがママ table et des... ハイチュウ Hai Trieu Chéris-1et3-話 七色手帖 糸巻きパレットガーデン 古布工房 小手毬 里山ガーデン たまがわ日和 ひとりを楽しむ a serene lif... も・め・ん・と ほっこリ日記 私の好きなもの Ricette the ... すもものキレイの素 *シアワセノカタチ やっぱり旅が好き♪ くーまくーま3 ..., 【愛と怒涛のけいこ飯】 ... 暮らしの中に優しい時間 Tea Wave ~幸... 暮らしのえんぴつ 使えるフィンランド語! 終の棲家のひとりごと♪ 山歩路通信―さんぽみちつ... 今中哲二氏講演会情報等 あれこれ逍遥日記 Vol.2 My style 身の丈暮らし ~ 築6... 春のよき日に vol.4 裂織・家事日記 絵日記日和 以前の記事
ライフログ
カテゴリ
全体 料理 郷土料理 保存食 ちょっと海の向う風 スープ 洋菓子 焼き菓子 和菓子 パン ジャム ここの美味しい物 ここの景色 ここの言葉 花たち 手作り 母の手作り 音楽 本 アート巡礼 日々のこと まごすけどん 思うこと こころもよう TON同盟 いつか通る道 ちょっと遊び お出かけ 好きなもの 私が考える原発 未分類 タグ
検索
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||